私は彼の大フアンだ。
特に「私を忘れないで」を読み終わったときは、言葉がしばらく出なかった。
哀しみ、愛おしさ、命。
この物語を書いているとき、作者はどんな気持ちだったろうかと思うと、
尊敬し胸が熱くなった。
でも、二度と(可能ならば)読みたくはないけれど。
1986年、ロンドンの町を歩いていたら、どこの本屋にも山積みに展示されていたのは
「An Artist of the Floating World」BY KAZUO ISHIGUROの本だった。
表紙は、日本の美しいお盆ちょうちん、白地に桔梗の花の絵。
アジアの片隅から来た私は、世界の大都市ロンドンにまだ慣れていなくて、
なんとなく萎縮していたかもしれない。
そんな中で出会った本、とてもうれしかった。母国が誇らしかった。
今も大切に持っている。
イシグロの作品「日の名残り」は、これぞ英国の心、という作品を日本人が書いた
と話題になった。
でも私は、その心情に国境はないと思った、いい作品だ。
国境のある文学を、私は受け入れられない。理解できないのだ。
村上春樹も、読者に国境はないようだ。
イシグロは、そして村上春樹も、「翻訳」に大変気を使っている。
日本語にしても英語(世界語だ)にしても、味が変わらないように。
日本の他の作家も(世界的な根幹的な視野の作品なら)、
その点が今後の課題かもしれない。
偶然だが、今日村上春樹の最新作「騎士団長殺し」を読み終わったところだった。
彼もノーベル賞候補だったのね?
彼の作品を初めて読んだ。
おもしろかった、楽しかった、とても、とても。
語り口がおもしろい、楽しい。嫌われるのもわかるが、私はOK、好き。
「春樹ワンダーランド」っていう感じ。
書く力量もさすがだと思う。すごい。
時々、英語で書いて日本語に訳したような感じの部分もあった。
それでいい。まったくそれでいいと思う。
でもでも、私は、イシグロの深淵さ、思慮深さのほうに、
大きく大きくおおき~~~く軍配をあげる。
(春樹氏の作品は一作しか読んでいないので、語る資格はないが)
対応も自然でスマートだ。
春樹氏は、へんな愛読者がTVにはしゃいで出てきて、お気の毒だと思う。
お二人ともほぼ同年代。
これからも、楽しみにしていますよ!
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当時(1986年)本屋さんに山積されていた本 |
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