「科学者たちが語る食欲」
ローベンハイマー,デイヴィッド/シンプソン,スティーヴン.著 櫻井 祐子訳
2021年1月 サンマーク出版
を読んだ(聴いた)。
大変面白く読んだ。
ダイエットのために食欲を落したい、と思って読み始めたが、
栄養学と生物学の科学書で、現代の人類の食物環境への警告でもあった。
著者たちは昆虫学者で、バッタの研究の中で食欲調査も行った(30年以上も前から)。
バッタの食欲はすさまじく、バッタの群れは大地を覆い
すべてを食べつくす位だから。
バッタの食欲を調査していたら、タンパク質を一定量、その個体に必要な量をとると、
それ以上の餌は食べないことを発見した。
長年の研究の結果、粘菌類、昆虫、クモ、マウス、ハエ、サル、
類人猿にいたるまでそれは同じだったのだ。
生物の食欲は、炭水化物や脂質の摂取量には関係なく、
タンパク質の必要量がとれたかで決まる!
環境により多少の変化はあるが、タンパク質が生存の鍵・食欲の鍵
であることには変わりがない。
タンパク質摂取量が多く、炭水化物摂取量の少ない個体は、繁殖力にすぐれ、
行動的で、長生きはしない。
炭水化物摂取量が多く、タンパク質摂取量の少ない個体は、
ゆっくりと長生きする。
一般に(と言う言い方をしますが)生物は、
「タンパク質欲」を満たすために食べているのだ。
ある実験)
摂取するタンパク質と炭水化物の割合で、生体を研究した。
1:16 では長寿 1:4を超えると産卵現象(子孫を残す)である
どれかを選択させると、人以外はタンパク質を選んだ。
生存の目的は遺伝子を残すことだから。
タンパク質の割合の多い食事を多く与えると、他の栄養の食事量は減るので、
体重は落ちる。
では、ダイエットには、タンパク質だけをメインに食べればいいのではないか?
いやいや、それでは心臓や血管への負担が増える。
体内活動が活発になるので、細胞のコピーミスも多くなり、
短命傾向になるのだ。
低タンパク質、高炭水化物の組み合わせが、寿命に好影響を与える。
(低タンパク質を有効にするには高炭水化物との組合せが必要)
低タンパク質、高炭水化物のバランスだと、
インスリン、血圧、コレステロールLDLなどいい値であった、が、太っていた。
故に、「肥満は健康に悪い」とは断言できない。
また、長寿と生殖力は全く反対の結果になった。
この本は半分まで読んでもなかなかダイエット(食欲を減らす)結論が
出てこない・・・。とはいえ、食の医科学的実証の話は、驚くばかりに面白い。
寿命や生物機構(長寿・生殖・太る痩せる・性格・環境適応を変化させるなど)は、
摂取食物の割合で制御できるのである。
では、人類だけに超肥満がなぜ増えているのか?
肥満が社会問題にまでなっているのか?
次の回で。
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