2022年9月24日土曜日

食欲

「科学者たちが語る食欲」

ローベンハイマー,デイヴィッド/シンプソン,スティーヴン.著 櫻井 祐子訳

2021年1月 サンマーク出版

を読んだ(聴いた)。


大変面白く読んだ。

ダイエットのために食欲を落したい、と思って読み始めたが、

栄養学と生物学の科学書で、現代の人類の食物環境への警告でもあった。


著者たちは昆虫学者で、バッタの研究の中で食欲調査も行った(30年以上も前から)。

バッタの食欲はすさまじく、バッタの群れは大地を覆い

すべてを食べつくす位だから。

バッタの食欲を調査していたら、タンパク質を一定量、その個体に必要な量をとると、

それ以上の餌は食べないことを発見した。

長年の研究の結果、粘菌類、昆虫、クモ、マウス、ハエ、サル、

類人猿にいたるまでそれは同じだったのだ。

生物の食欲は、炭水化物や脂質の摂取量には関係なく、

タンパク質の必要量がとれたかで決まる!

環境により多少の変化はあるが、タンパク質が生存の鍵・食欲の鍵

であることには変わりがない。


タンパク質摂取量が多く、炭水化物摂取量の少ない個体は、繁殖力にすぐれ、

行動的で、長生きはしない。

炭水化物摂取量が多く、タンパク質摂取量の少ない個体は、

ゆっくりと長生きする。

一般に(と言う言い方をしますが)生物は、

「タンパク質欲」を満たすために食べているのだ。


ある実験)

摂取するタンパク質と炭水化物の割合で、生体を研究した。

1:16 では長寿  1:4を超えると産卵現象(子孫を残す)である

どれかを選択させると、人以外はタンパク質を選んだ。

生存の目的は遺伝子を残すことだから。


タンパク質の割合の多い食事を多く与えると、他の栄養の食事量は減るので、

体重は落ちる。

では、ダイエットには、タンパク質だけをメインに食べればいいのではないか?

いやいや、それでは心臓や血管への負担が増える。

体内活動が活発になるので、細胞のコピーミスも多くなり、

短命傾向になるのだ。


低タンパク質、高炭水化物の組み合わせが、寿命に好影響を与える。

(低タンパク質を有効にするには高炭水化物との組合せが必要)

低タンパク質、高炭水化物のバランスだと、

インスリン、血圧、コレステロールLDLなどいい値であった、が、太っていた

故に、「肥満は健康に悪い」とは断言できない。

また、長寿と生殖力は全く反対の結果になった。


この本は半分まで読んでもなかなかダイエット(食欲を減らす)結論が

出てこない・・・。とはいえ、食の医科学的実証の話は、驚くばかりに面白い。

寿命や生物機構(長寿・生殖・太る痩せる・性格・環境適応を変化させるなど)は、

摂取食物の割合で制御できるのである。


では、人類だけに超肥満がなぜ増えているのか? 

肥満が社会問題にまでなっているのか?

次の回で。
















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