今日は精霊流しの日。
昔の精霊流しは、お盆のお供えものを海に流した。
今は砂浜に大きな穴を掘って、そこで燃やすのだ。
穴の周りには、お供えの花やお線香がたてられる。
どのような形にせよ、現在精霊流しの行事を行うのは、私の地区だけだ。
町内の役員たちは数日前から広く深い穴をほり、
大きな看板を市内の広範囲に立てている。
他の地区の人達も、徒歩、自転車、車などでお供え物を持ってやってくる。
「すごい!今でもやっているのね。私の家ではごみ箱に捨ててるわ」
この地区で育ち、今は近郊に移住した友人が驚いていた。
朝雨戸を開けると、海の方から煙の匂いが漂ってきた。
町に流れる煙は、亡くなった人々を偲んでいる気がする。
私もお供え物を紙袋に入れ、お線香代とお賽銭を持って出かけた。
もう9時を過ぎていた。開催時間は朝6時から10時までだ。
いつもはもっと早く行くのだが、突然大雨になったり、やんだり、
天候の変化が激しく遅くなった。
浜辺は家のすぐ近くである。
いつもはあまり人もいないのだが、多くの人々が行きかってにぎやかだ。
町内の役員から青年団まで総出で、人々を誘導し、ヘルプしている。
立ち上る煙が海へ流れ空に登り、御霊があの世へ帰って行くようだ。
お線香をたて見送り、祈った。
帰り道、町内を歩きながら思う。
この角の電気屋さんの奧さんは一か月ほど前に亡くなられた。新盆だわ。
あそこの医者も、知らない間に亡くなっていた。
あそこの人は家を畳んでどこか施設に移った。
この3階建のビルに住んでいたご夫婦は、奥様がなくなり、建物を売りに出して
近くのマンションに住む従兄家族と同居した。
でも、この建物はまだ売れていないな。
町の表面は変わらないが、住民たちはゆっくりしかし確実に
入れ替わり変化していることに、今更ながら驚いた。
私が亡くなっても、何十年たっても、何百年たっても、
江戸時代からのこの道路は、遠くの山並みは、
こんな感じで続いていくんだろう、と思った。
精霊流しの煙が、私を包んでいた。
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遅い時間&天候のせいで、 いつもより小規模な炎 |
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海は雨雲に覆われていた |
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