2016年3月30日水曜日

三味線の午後

ベベンベンベン 歯切れよい三味線がなる。

津軽じょんがら節 ♪

突然止まる。

「アレ、ちょっとずれちゃったな」

キコキコと糸巻きが調整される。

「お疲れ様でした~。ありがとう」

トキさんが叫ぶ。

奏者は笑いながら、再びバチを踊らせる。

認知症の人が住むケア・ハウスの午後である。

約20人のお年寄りとお手伝いの人が聞き入る中、ボランティア、というよりは、

練習中の自分の腕前を披露するおじいさんの、三味線を聴く会。

合間にトキさんが、何度も大声で

「お疲れ様でした~。ありがとう」 そして歌いだす。


は ア るがきた は ア るがきた どこに イ きた

きいしの すみれや れんげの はなが

ああるきはじめたみいちゃんと~

はい、おしま~い


歌として、何とかまとまっていておかしい。

だれもが、これが自然と、反応なし。

私だけが、物珍しく一心に観察している。

おかしくもあり、哀しくもあり、でもこれが積み上げられた生命の時間の結果。

はるかかなたに思いをはせているような、皆の表情。

だれからも、神々しさ、思いやり、生きてきた思慮深さを感じられる。

自分がどのようになるかわからないけれど、心穏やかに受け入れたい、

などと思う午後だった。

皆さんに会えてよかったです。





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