津軽じょんがら節 ♪
突然止まる。
「アレ、ちょっとずれちゃったな」
キコキコと糸巻きが調整される。
「お疲れ様でした~。ありがとう」
トキさんが叫ぶ。
奏者は笑いながら、再びバチを踊らせる。
認知症の人が住むケア・ハウスの午後である。
約20人のお年寄りとお手伝いの人が聞き入る中、ボランティア、というよりは、
練習中の自分の腕前を披露するおじいさんの、三味線を聴く会。
合間にトキさんが、何度も大声で
「お疲れ様でした~。ありがとう」 そして歌いだす。
きいしの すみれや れんげの はなが
ああるきはじめたみいちゃんと~
はい、おしま~い
歌として、何とかまとまっていておかしい。
だれもが、これが自然と、反応なし。
私だけが、物珍しく一心に観察している。
おかしくもあり、哀しくもあり、でもこれが積み上げられた生命の時間の結果。
はるかかなたに思いをはせているような、皆の表情。
だれからも、神々しさ、思いやり、生きてきた思慮深さを感じられる。
自分がどのようになるかわからないけれど、心穏やかに受け入れたい、
などと思う午後だった。
皆さんに会えてよかったです。
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