2016年4月7日木曜日

絵の具セット

「絵を描くのね。 迷惑でなかったら、これを使って欲しいの」

少し年上の友人が、押入れの奥から出してきたのは、

未使用の絵具セットだった。

顔彩で水彩とは少し異なるが、ほぼ同じように使える。

多分絵手紙用のもので、コンパクトになったセットだ。

彼女の、亡くなった伯母に当たる方のものだと言う。

「私は絵を描かないので使わないんだけれど、捨てられなくて」 とのこと。

やさしい彼女は、高齢の方々をいつも大切にお世話していた。

その方々が最近立て続けに亡くなり、彼女は突然眠れなくなってしまった。

すっかり痩せて、やつれ果ててしまった彼女。

私は喜んで、その絵の具セットをいただき、ちょっとした絵を描いて、

お礼状を出した。 先週のことだ。

2-3日後、「うれしかった」と、お礼の電話を受けた。

無口の彼女には珍しく、たくさんたくさん色々な話をしてくれた。

時間はかかるでしょうけれど、きっと元気になりますよ。

元気になってね。

その思いを込めて、私、このセット使います。



P.S
昨日書いた「新しいこと」は、無難にスタートいたしました。
また機会があったら、書きます。
それなりのレベルで、好奇心進化中。

0 件のコメント:

コメントを投稿

秋の夜の想い出

深夜、突然ビートルズの曲が聞こえてきた。 身体の周りに、ロンドンのあの街、あの通りが襲ってきた! 雑踏の音、笑い声、匂いまでする。 「去年ね、この前の通りを、ポールが通ったのよ! 授業中だったけれど、皆で飛び出して見に行ったわ」と、 先生の弾んだ声。 私が軽く英語学校へ行きながら...